DX加速化推進事業

鳴門渦潮高校 アントレ推進大使報告書

2025年10月24日 16時54分

アントレプレナーシップ推進⼤使派遣事業

鳴門から世界へ!「自分の足で見て、考え、発信する力」

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徳島県立鳴門渦潮高等学校 講演レポート 大使 :入江 英也氏

2025年10月22日、徳島県立鳴門渦潮高等学校のうずしおホールにて、神山まるごと高専の入江氏が「アントレ推進大使」として講演を行いました。

この講演の目的は、生徒たちの「調べ学習」を一歩進め、“自分で考えて行動する探究”へと発展させるきっかけとすることです。

タイトルは「鳴門から世界へ 自分の足で見て、考え、発信する力」であり、「地域を調べるだけで終わらせない、“自分ごと化”の探究へ」をテーマでお話いただきました。

1. 講演者が見てきた「世界」:旅と学びは似ている

講演者は、学生時代にインターネットが身近になった経験や、学生起業で福岡県ヤングベンチャー企業第一号に認定された経歴、またデータマイニングを専門とする研究者としての側面を紹介しました。

特に、12歳でプログラムを始めた経緯や、高専・大学時代にバックパッカーとして世界中を一人旅した経験について語られました。この旅を通じて「世界は広い。いつか海外で仕事をしたい」と思うようになったといいます。

現地体験の価値として、「ニュースや他人から聞いた情報と、現地で見た現実のギャップが大きかった」点を指摘し、「旅と学びは似ている」と述べられました。

2. 日本社会が直面する課題とイノベーションの必要性

なぜ探究学習(調べ学習)が必要なのか、その背景として現代日本が抱える課題が挙げられました。

• 人口減少:2024年は89万人減。

• 2030年問題と人手不足:不足する約300万人分の労働需要を満たすためには、4%の生産性を上げる必要があります。

• 生産性の低下:1980年代には先進諸国トップだった日本の生産性が、1990年代、2000年代と大きく減少しています。

この課題を解決するために「イノベーション」が必要だと強調されました。

イノベーションとは何か?

イノベーションとは、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが定義した「新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産すること」です。これは単なる「技術革新」にとどまらず、「今までにない新しい仕組みや価値観・考え方などを取り入れた革新・新機軸」も含まれます。

イノベーションの例として、液体洗剤・ジェルボール型洗剤、InstagramなどのSNS、電気自動車、サブスクリプションなどが挙げられました。

求められる「アントレプレナーシップ」

日本の世界競争力ランキング(2020)で指摘される「企業の俊敏性」「起業家精神」「幹部の国際経験」といった要素の改善が求められます。

特に重要なのが**アントレプレナーシップ(起業家精神)です。これは、「様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず、自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神や姿勢」のことで、起業家だけでなくあらゆる職業、世代で求められる能力です。

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3. 「地域×自分の興味」で生み出す新しい発信の形

講演者は、地域探求を「旅」と近いものと捉え、「地域課題 × 自分の興味」を結びつけることで新しい地域貢献・発信の形が生まれると提案しました。

例として、講演者が鳴門うどんを食べながら考案した、地域活性化のための具体的なアイデアが紹介されました。

既に完全オリジナルなアイデアは世の中に無いという認識のもと、**「TTP(徹底的にパクる)」という言葉が紹介されましたが、ここで重要なのは「パクリ」ではなく「オマージュ」**であると説明されました。

「オマージュ」とは、オリジナルへの敬意を込めて、そのスタイルや要素を独自解釈して取り入れることです。一方、「パクリ」は敬意なく利益目的で無断でコピーする行為であり、この違いが強調されました。

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4. 行動を支える2つの重要な姿勢

新しい価値を生み出すためには、知識や能力だけでなく、「意欲・意識・考え方やスタンス」といった「行動」が最も大切です。

1. ベータメンタリティ(βメンタリティ)

行動する上で重要なスタンスが「ベータメンタリティ」です。 これは、完成形を追わず、不完全な状態でもまず試してチャレンジし続ける姿勢を指します。

• 「とりあえずやってみよう」という精神。

• 「すべては成長の途上」というスタンス。

• 失敗を恐れないこと、アップデートし続けること。

神山まるごと高専の学生が取り組んでいる「10代が考えるわかめプロジェクト」も例として紹介されました。これは、海外で外来種として問題となっているわかめを、外国の方でも気軽に食べられる「わかめのジャム」として開発し、課題解決に挑む活動です。

2. 海外に目を向ける重要性

まとめとして、「行動あるのみ」、「自分一人で出来ることは限られる」、そして「海外にも目を向けましょう!」と呼びかけられました。

市場を変える戦略の例として、インドネシアでの公文(KUMON)の普及が紹介されました。インドネシアの5~14歳の人口(5,500万人)は、日本のそれ(1,130万人)を大きく上回っており、世界市場へ目を向けることの重要性が示されました。